豊かさの申し子

会社を作ってみると、今まで素通りしていた書店のビジネス書コーナーにも足が向くようになります。そうすると、起業家(と名乗るのは何だか恥ずかしいですが)として放っておけない本が見えてきます。その一つがムハマド・ユヌスの「貧困のない世界を創る」です。この本は、2006年ノーベル平和賞を受賞したマイクロクレジットのグラミン銀行創設者、ソーシャル・ビジネスで有名なムハマド・ユヌスのノーベル賞受賞後初の著作です。

心にひびく言葉がたくさんあります。「貧しい者に与えるという行為は、貧しい者の自尊心を奪い傷つけるだけで貧困を解決しない。行うべきは彼らのエネルギーと創造性を解き放つことができる環境をつくること」なんてのは、貧困に限らずいろんな社会問題に応用できる深い言葉だと思います。
人間の根深い特性の一つは、他の人々のために良い行いをしたいという願望だ。それは既存のビジネスでは完全に無視される人間性の一つである。ソーシャルビジネスはこの人間の渇望を満たす。だから人々は惹きつけられるのだ。(中略)人々は人生の意味を求めているのだ。それは世界をよりよい場所にするために、あなたが本分を尽くしているということを知ることからのみ得られる意味なのである。

本当にそうだと思います。「お金」が現代社会で演じる役割はとてつもなく大きくて、かといって、「お金大好き!」なんてふうにはとても思えなくて、なんならお金と関係のないところで生きたいとさえ思ってしまうのですが、今の世の中でそんなこと言ってられるわけもなく、いつまでも目を逸らしたままではいられない「お金」。この本は「お金」を見る目に希望の光を差してくれます。

WebやITにも多くのページがさかれ言及されているのですが、
私はこの(ソーシャルビジネスが次世代のITを創造するための)努力を始めるための最善の場所は個人であると見ている。特にITに熱をあげている個人と、ビジネス、技術、科学、芸術、アカデミックの世界に足がかりを持っている個人である。聡明で理想主義的で、ITを貧しい人々が貧困から免れるのを助けることに使う方法を見つけることに、彼らの時間やエネルギー、そして才能を注ぎたいと考えている何千人もの人が世界中にいる。インターネットを駆使すれば、世界の最も重要な社会問題に情報のパワーを充てることに身を捧げる人々を結集し、グローバルな力を築くことができる。

何千人どころかもっとたくさんいると思います。そして、自分で言いますが、ここにもいます。

僕が会社を作ったのは、別に社会問題を解決しようという高い志があったわけでなく、がっぽり儲けてやろうと思っているわけでも当然なく、人に勧められて、今まで大学や研究所でやってきたことを継続するため、そこで出会った人たちとのつながりを維持するために、会社法人が便利なツールかもしれない、という目論みがあったからです。あと、全然知らない世界だからちょっとのぞいてみたい、とか、なんか面白そう、とか、そういう理由で作った会社です。ビジネスの世界って、今まで積極的に目を逸らしてきただけあって知らないことだらけですが、ひょっとしたら会社を持っていることでできることの選択肢や可能性ってもっと広がるんじゃないか、って思い始めています。ちょっと頑張って勉強してみようと思います。

そうそう、ソーシャル・ビジネスについては、昨日の朝日新聞の社説でも紹介されてました。素敵な記事です。紹介されてる社会起業家のほとんどが同年代(4人中2人が同い年!)っていうのも何だか嬉しくて、そして何より記者のコメントが嬉しい感じです。ちょっと引用すると、

若者の間には、競争に明け暮れる社会から逃れたいという意識もあろう。それでも、社会起業家の出現は社会の「復元力」の表れだと考えたい。彼らは日本が築き上げた豊かさの申し子なのだ。戦後の成長を支えたのは、企業社会にどっぷりつかった「会社人間」だった。それが崩れて久しい。新しい生き方・働き方が育つよう応援したい。(中略)物質的には世界有数の豊かさを獲得した日本で、さまざまなシステムが制度疲労を起こしている。それを解決し次の経済社会の姿を見つけることが、本当の豊かさにつながるはずだ。


全くその通りです。豊かさの申し子です。僕たちの世代で、日本の社会にこれ以上の物質的豊かさが必要だと本気で信じる人はほとんどいないと思います。いるとすれば、それは余程の変態か間抜け、もしくはその両方であるに違いありません。次の時代の豊かさを創ることが、豊かさの申し子に与えられたお仕事だと思います。

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