カキフライが無いなら来なかった

最近読んだ本のご紹介。

カキフライが無いなら来なかった」。せきしろピース又吉直樹の共著です。
妄想文学の鬼才と、お笑いコンビ「ピース」の奇才が詠むセンチメンタル過剰で自意識異常な自由律俳句469句。散文27篇と著者二人の撮影による写真付き。文学すぎる戯れ言か、お題のない大喜利か。

自由律俳句、好きなんです。高校の国語の教科書でしょうか、尾崎放哉の句が載っていて衝撃を受け、それ以来好きなんです。
咳をしても一人

などが有名な尾崎放哉ですが、明治時代に帝大法学部を卒業し、サラリーマンをしたりしますが、酒癖が悪くトラブルを起こして職を転々とし、事業を起こしては失敗し、妻にも捨てられ、寺男になったり、そこでもまたトラブルを起こして別の寺に身を寄せ、なんて具合に孤独で貧しい放浪の生活を送り、42歳で結核でなくなった人です。その人生の最期の辞世の句、
春の山の後ろから煙が出だした

なんてもう、5分くらいボーっとさせられます。出だした、ですよ、出だした。煙が。自分が自分の死を真剣に意識するようになったら、って考えてもちょっと想像ができないわけですが、ここまで淡々とできるだろうか、っていうかなんていうか、かっこいいと思うんです。命が芽吹き始める春の山と死のメタファーであるところの煙の強烈なコントラストが、こんなにも短い言葉であっけらかんとのん気に表現されてて。しかも、「出だした」なんて、始まるという意味の言葉で、句だけじゃなくて人生も終えるっていうのが、ものすごいダンディだと思うんです。

でまあ、本題のカキフライです。自由律俳句ということで期待して読みました。でまあ、尾崎放哉や種田山頭火と比較するとちょっと物足りないというか、ズシンとはこないのですが、比較する対照が違うように思います。もっとこう生活に近いところにあって、軽やかで、なんていうか自由律俳句っていうか、自由律川柳、っていうか。余計なことを考えずに読むととっても素敵です。

グっときたのをいくつかご紹介します。
すれ違う人みんな金融のウチワを持ってる祭の夜

街を歩いてても消費者金融の看板ばっかり、電車の広告も消費者金融だらけ、なんともいえない気分になります。そして非日常の代名詞ともいえるお祭りでも。
トラックが右に曲がると言う

言う言う。あれって、何だかみっともないですよね。ただのビープ音じゃダメなんでしょうかね。トラックにしゃべらせたい、って思ってるトラックの運転手さんや歩行者って本当にいるんでしょうか。っていうか、あの機能をつけたいと、心の底から望んだ人が開発、製造、販売、どの工程にもいないように思えるわけですが、どこかにいたんでしょうかね。
イタチだったという結論で落ち着いた

あるある...。
名前わからぬキノコ細長く斜め上へ

やっぱり皆、キノコのことを放っておけないわけです。
改装中の寺に用は無し

ふふ。形骸化した日本の仏教にはもはや建造物の文化遺産的価値しか認めない、っていう痛烈な批判。
よく知らない人だけど髪切ったのは一目瞭然

も好きです。
雪になり損ねた雨で濡れる

これなんて本当にキュンとします。

でまあ、ブログに書いて紹介するほどでもないかなぁ、などと思ったりもしたのですが、開いたページにハエがとまったりするあたり、この本らしくて素敵だなぁ、と思って。
090715

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