教師を授けられた
教師を授けられた。
9月21日から30日、京都の本願寺西山別院で行われていた教師教習に参加してきた。感想というほどの感想もないのだけど、一応思ったことをメモしておこう。
初日、集合して簡単な説明があった後、居室に通されて俗服から法衣に着替え。そこに指導員の方も一緒についてきて着替えの様子をチェックするのだけど(驚くけど)、
「(真顔で)あれ、なんで下着が白じゃないの?」
「(半笑いで)え!?」
「(真顔で)案内に書いてあったよね?読んでない?」
「(ひきつった顔で)え、あぁ、書いてあったようにも...。」
「(真顔で)今日は電話を許可するので、電話して送ってもらうようにしてください。」
ま、確かに案内にそう書いてあった。だけど、わざわざ買うのももったいないし、別にどうでもいいことだろうと普段通りの下着で行ったわけだけど、まさかの展開...。公衆電話から家に電話すると父が出て、
「あ、お父さん?下着、白くないとあかんねんて。2~3枚買って送ってもらえるかな?」
とまぁ、なんというか、まぁ、なんというか...。
なぜ下着は白じゃないのいけないのか、理由の説明はないけれど、僧侶に華美な下着は不適切だから、みたいな感じだろうか。指導員の先生、赤いアルファロメオで出勤されてますけど...。ま、僧侶が所有する車の車種なんて、僧侶の下着の色と同じ程度にどうでもいいことですね。どうかな。
毎日5時半起床で、掃除、朝のお勤め、朝食、講義、昼食、講義、夕方のお勤め、夕食、夜のお勤め、翌日のお勤めの練習、課題、入浴、、、、と23時の消灯までみっちり予定がつまってた。ここ数年、人に叱られるという経験をほとんどしてなかったので、叱られっぱなしの生活はちょっと新鮮だった。
参加者は45名で、年齢層は、20代が半分、30代が2割、40代1割、50代1割、60代1割みたいな感じかな。男性が8割、女性が2割程度か。現役大学生、お寺でお坊さんをしてる人、普通の会社員をしてる人、定年退職後の人、いろんな人がいた。僧侶であることに熱い思いを持っている人もいれば、のっぴきならない事情でやむを得ず住職を引き受けることになってしまった人、なんとなくの人、参加の動機もいろいろ。
初日から「あと何日で帰れる」とカウントダウンを始める人が少なからずいるのだけど、若い人ほど帰ることを心待ちしていて、年をとるほど帰りたいと言わなくなる傾向があるように思えておもしろかった。年をとると、不平不満を口に出さなくなるのか、参加のモチベーションが高いのか、はたまた外の生活がつらいだけなのか。
印象に残っているのは、法話の実習。7~8人のグループに分かれて、それぞれ用意してきたお話をして、ベテランの布教使さんにコメントしてもらうという実習。法話って本当に難しくて、「法話は教義の解釈や解説ではない。あなたの思いや考えを披露する場所でもない。」と言われる。じゃぁ、何を話すのさ、と思うのだけど、「仏法(仏教の教え)のあじわいやよろこび」と。ふうむ...。よく分からないなりに原稿を作っていって実習に臨んだわけだけど、それでいただいたコメントは「あなたのお話には、『自力』の発想が滲んでいるように思う。」「『自覚的でありたい』と締めくくっているが、あなたが気付くのではない、気付かされるんです。」などなど、他力思想についてもっと勉強しなさい、という内容のコメントをもらった(のだと思う、たぶん)。いやでも、このあたりも難しくって、「私が一生懸命勉強する」というのも、それだって「自力作善」的な考え方なんじゃないの?とも思うのだけど、どう考えたらいいのか...。こんど暇になったら誰かの「他力」の本を読んでみよう。
前々から思っていたことだけど、仏教はとても多様で、「どう生きるのが良い僧侶なのか」「僧侶とは何なのか」というのが、 とても分かりくく、どっちに向かって何を頑張ると良いのか、そもそも頑張ることでもないのか、よく分からない。今回の教習を終えて、ますます分からなくなってきた。ま、考えてても仕方ないことなんだろうなぁ、という気もする。とりあえずは、早寝・早起き・少食・白ブリーフ生活を心がけたい。
最終日には本山の晨朝勤行に参拝するのだけど、本山でお勤めされている人たちは、いわばお勤めのプロ中のプロのような人たちで、声も節も拍も作法も、確かに僕が叱られるのも納得の素晴らしいお勤めで感動した。ぜひ多くの人に見てみてほしいと思った。本願寺では基本的に毎日朝6時からお勤めされてるので、出張などで京都に宿泊される際には、本願寺のウェブサイトでスケジュールを確認して、ちょっと早起きして参拝されるのも良いかも。予約も参拝料も不要です。外国からのお客さんをお連れする場所としても最適かと。きっととても感動されると思います。あと、研修が行われていた西山別院も、朝のお勤めは公開されていて、研修期間中であれば、研修生がしごかれている様子が見れるので、これまたおもしろいと思います。