放影研のLSSコホート論文を読みたい

原発事故にともなって表面化した様々な問題が無視できなくて、だけどどこに焦点を当てればいいのか、何の勉強すればいいのか分からず、日々のインプットに翻弄され、他の雑用に追われてほったらかしになり、という日々が続いています。 まずはやっぱり福島の原発事故の健康被害が心配で、しかも大学では保健学を学んできたわけなので、まずは放射線と健康に関する論文を読むことは欠かせないだろう、と考えるようになりました。 2011年4月5日のブログ で、 放射線の健康への影響、ここ数週間でたくさんの情報に触れましたが、結局のところよく分かってないんですよね。僕はこの分野に詳しくはないですが、放射線の健康への影響を評価するのって、被曝量の評価も難しければ、数世代にわたるフォローアップも難しく、介入研究で他の要因をコントロールすることもできない、しかも強力な利害関係者がたくさんいて被曝自体が隠蔽されがち、こういうものを正確に評価することが極めて難しいということはよく分かります。テレビなどで言われている「安全です」は「(たとえ後々健康被害が出ても因果関係を立証できないから)安全です」なんだと思います。 と書いてるのですが、この考えは今も同じで、生活環境に放射性物質がまかれた状況の健康影響を調べる研究デザインとして、RCTやコントロール群をおいた調査、周到に準備された前向きコホート研究などはあり得ないので、どうせまともなエビデンスなんてないに決まってる、これは未知のリスクである、安全も危険も分からない、と考えています。 なのですが、こんなに研究に不利な条件が揃っているにもかかわらず、いろんな研究の蓄積があるわけで、ちゃんと自分で原典にあたらないといけない、と思っていました。で、読むべき論文はいろいろありそうだけど、今の様々な議論でよく参照されるICRP、これの様々な基準の大きな論拠になっている広島・長崎の原爆被爆者の被曝線量と健康調査、これがまずは必読だろうと考えてました。 学生の時の疫学の授業でも「広島の比治山に日米協同の研究センターがあって、終戦直後から被爆者の大規模なコホートが行われている。」という話を聞いたことがあって、それが今でも記憶に残っているところをみると、その時から何かひっかかってたんですね。「爆弾を落とした国と落とされた国の研究者が共同で被爆者を追跡?!」と。