「ヒマの過ごし方」を聞きながら「暇と退屈の倫理学」を読んだ

 國分功一郎 著「暇と退屈の倫理学」を読んだ。すごく面白かった。各章の副題が、

  1. ウサギ狩りに行く人は本当は何が欲しいのか? 
  2. 人間はいつから退屈しているのか?
  3. なぜ”ひまじん”が尊敬されきたのか?
  4. 贅沢とは何か?
  5. そもそも退屈とは何か?
  6. トカゲの世界をのぞくことは可能か?
  7. 決断することは人間の証しか?
印象的だった部分のメモ。

一章ではパスカル。
狩りとは何か? パスカルはこう言う。 狩りとは買ったりもらったりしたのでは欲しくもないウサギを追いかけて一日中駆けずり回ることである。 人は獲物が欲しいのではない。 退屈から逃れたいから、気晴らしをしたいから、 ひいては、みじめな人間の運命から目をそらしたいから、 狩りに行くのである。 …(略)…人間は退屈に耐えられないから気晴らしを求める。 賭け事をしたり、戦争をしたり、名誉ある職をもとめたりする。 それだけならまだ分かる。 しかし人間のみじめはそこでは終わらない。 おろかなる人間は、退屈に耐えられないから気晴らしをもとめているにすぎないというのに、 自分が追い求めるもののなかに本当の幸福があると思い込んでいる、 とパスカルは言うのである。 …(略)…狩りや賭け事は気晴らしである。 そして、「君は。自分がもとめているものを手に入れたとしても幸福にはならないよ」 などと訳知り顔で人に指摘して回るのも同じく気晴らしなのだ。 しかもその人は、この取り違えを知った上で、 自分はそこには陥っていない思い込んでいるのだから、 こういう人はもっともおろかだ。
二章では、西田正規の「人類史のなかの定住革命」が読みたくなった。

三章は経済史のお話で、ポスト・フォーディズムの消費=生産スタイルが構造的に要請する労働形態(非正規雇用)について、
かつてオフィス・オートメーションが現れたときには、機械が人間の雇用を奪うと恐れられた。しかしそれは杞憂に終わった。いまは人間が機械の代わりをしている。
前後がないとあれだけど、すごく納得。

四章では、ルソーの「自然状態論」。
たとえばだれかが集めた果実や、その人が殺した獲物、その人が使っていた洞窟を、別の人が力ずくで奪うことはできる。しかし、どうやって他人を服従させることができるだろう?「所有するものが何もない人々の間で、他人を自分に依存させる<鎖>をどのようにして作り出すことができるのだろうか」。ルソーがここで「所有」に言及していることは極めて重要である。所有がなければ人を隷属させたり、抑圧したりはできない。
うん。たしかに...。所有とは無関係な隷属、本当にないかな...。すぐには思いつかないけど、とにかく、所有と抑圧が密接に関係していることは直感的にその通りだと思う。

五章のハイデッガーの退屈の形式、おもしろい。

六章のユクスキュルの「環世界 Umwelt」これも元の本が読みたくなった。

七章、印象に残った言葉は、
「考えることが重要だ」と言う人たちは、重大な事実を見逃している。 それは、人間はものを考えないですむ生活を目指して生きているという事実だ。
うふふ。ほんとその通りだと思う。

で、もっともっと素敵な言葉があったと思うけど、メモしきれなかった。とてもおもしろかった。「スピノザの方法」も読みたくなった。

で、この本を読んでいる間、ずっと頭に流れていた曲があって、それは、スチャダラパーの「ヒマの過ごし方」。



この歌詞、若いころに聞いてものすごく影響受けてるなぁ、と今あらためて思った。

そんなヒマがあったらって言うが
みんなヒマは嫌いなのか
ヒマはダメか?悪いのか? そんなに嫌かヒマが

超忙しくて もーヒマがなくて とか言ってる人に限って
さらに忙しい休日を 過ごしていたりするのだろう
なぜいそがしくするのだろう 何もしないでいられないのだろう
何もしない不安それは何だ
恐いのはただただある時間
縮めることも のばすことも ましてや 消すことも不可能
すべてのものに同じだけの 時間が与えられているとしよう
そうなってくると 恋愛 ファミコン 仕事 その他諸々
かなり思い掛けないことだが
人は必死で ヒマをつぶしているだけだ

今の人がヒマを受け入れる 事が出来なくなりつつあるなら
それは能力の減退だ 減退はいかん くいとめるのだ
ヒマ人どもよ立ち上がるときだ
ヒマを見つけて ヒマを知れ
ヒマを生き抜く強さを持て
一生 棒にふるくらいの ヒマとゆとりを持って進もう
人の数だけヒマはあるのだ
それこそあたりまえの事なのだ
この曲でニヤリとできる人は、この本もきっと楽しめます。できない人も、それはそれでぜひ読んでいただきたい本です。そんなヒマはないのかもしれないけど。

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