スキゾフレニア・アポン・タイン

シロシベとして初外国、ニューカッスル・アポン・タインなう、です。仕事の内容は、研究者の現地視察の補助みたいなことです。別に通訳やアレンジができるわけでもなく、どうお役に立てるのかよく分からないのですが、まあ連れてってもらえるんなら、ということでヌケヌケとやってきました初UKです。ほんとにずっとジメジメ雨が降っています。

昨日からお仕事が始まりましたが、それはさておき、2日目早朝の話。時差ぼけで朝5時に目が覚めてしまい、ホテル全館禁煙ということで外でタバコを吸っていました。小雨が降る夜明け前の朝、まだ真っ暗です。街を歩く人はまったくいません。そんな中、中年の男性がこちらに向かって歩きてきます。やや緊張しながら目を合わさないように注意を払い、視線を感じつつも何事もなくその男性は通り過ぎました。ホッとしたのも束の間、男性は戻ってきて話しかけてきました...。

どこから来たの?日本?学生?旅行?そのタバコ何?Seven Stars?沖縄行ったことある?フナコシは知ってる?空手マスターのフナコシ、知らない?みたいな話です。こちらも一応いろいろ質問してみたところ、男性はアルジェリア(ナイジェリアだったっけ...)出身で、ニューカッスルのケバブ屋さんで働いてて、幼いころに空手を習ってて、今日は寝れなくて散歩しているとのこと。ここに住んでるんですか?って聞いてみたら、
「ここから2分だよ。来なよ!」
みたいなことを言います...。どう考えても犯罪に巻き込まれるシチュエーションです。たまたま来るときにアムステルダムの空港で読んだ、パリで強盗被害にあったエスノグラファのブログなんかも脳裏をよぎります。路地裏に連れていかれてそこに仲間が待ってて暴行を受けて身ぐるみ剥がされるところを想像しつつ3秒くらい迷いましたが、どう見ても悪い人には見えないので、というか好奇心に負けてついて行くことにしました。

最高に緊張しながら全方向に注意しながらついていくと本当に2分ほどで普通の集合住宅につきました。ドアを開けて中に入ります。逃げ道を確認しながらついていきますが、男性はご近所に気を使ってヒソヒソ声、やっぱり悪い人ではないように思えます。階段を上がって4階です。「ここだよ」と言いながらドアに2つついている鍵を開け、ドアを開けたその時。

何かあると面白かったのですが、別に何もなくて、ただの小汚い男性の一人暮らしのお部屋でした。ソファを指差し「座って座って、お茶をいれるから。」ということでソファに座ります。そして、男性がイギリスに22年前に引っ越してきたこと、アルジェリアには両親と兄弟を4人の姪がいること、一人暮らしで近所に住んでいる猫をかわいがっていること、などを話してくれます。携帯に入ってる猫の写真を見せてくれたり、という感じでもうすっかり油断しきっています。ただ単に暇で寂しい寝れない夜に話を聞いてくれる人を探してただけ、という風情です。

で、男性はイギリスが嫌いだそうで、その理由を聞くと22年のイギリス生活の歴史を話してくれました。こちらにきていろいろな仕事をしていたがなかなかうまくいかず、十数年前のある日、精神科で注射を打たれて強制入院させられ、その後も20回近く入退院を繰り返し、今も通院してて、でも薬は調子が悪くなるから飲んでいない、とのこと。「統合失調症?」と聞いてみると「そう!」とのこと。今回のUKツアーは統合失調症はあまり関係ないのですが、まあ、なんというか、どこまで行ってもご縁があるようで。

「メンタルヘルスのPhDだぜ。」という話をしたところ、男性はとても嬉しそうで、最近寝れなくてね...、リスペリンドンがね...、どうしたらいいんだろう?という感じのお話がどんどん出てきます。こういう時には全く役に立たないPhDです...。男性の住んでる住宅の家賃は全額補助が出ていて、イギリスは嫌いだけど仕方なく住んでる、みたいなことだそうです。いつか日本に行きたい、住みたい、とのこと。日本に住むにはどうすればいいんでしょうね。日本人はいい人が多いけど、日本の政府は外国人には厳しいと思うよ、という話をしたら「知ってる」とのこと。そうですか...。

さっきのエスノグラファのように、移民問題、社会格差、政治と学問などについて語れると素敵なのですが、まあ、よく分からないので、エキゾチックな味のするお茶をいただき、タバコを吸って、「日本に来たら連絡してね。」とメールアドレスを置いて帰ってきました。

しとしとと雨の降る寒いイギリスの風が身に染みます。



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