Song Dong
これはニューヨークのMOMAで展示されていた、宋冬(Song Dong)の「Waste Not / 物尽其用」という作品。宋冬の母親が50年間捨てずにお家に持っていたものをそのまま展示した作品(こちらが詳しいです)。
僕は容赦なく物を捨てます。でも、捨てる時に何も思わないわけではなくて、罪悪感や良心の呵責を人並みにというか、きっと人並み以上に感じています。どんなしょうもない物であっても、それを作った人や運んだ人、売る人、買う人、あげる人、膨大な数の人が関わっていて、いろんな思いがつまっているのは知っています。何とも思わないわけではありません。
原料になっている素材だって、たとえば、木綿のシャツの原料になった綿の木にしたって、その木を育てた土には、近くで息絶えた小さな生き物の死体が微生物によって分解されてできた土が混ざっていて、その木を育てた雨には、どこかの海でクジラの吹いた潮が蒸発して雲になった水だって混ざっているわけです。ロマンチックな話ではなくて、事実としてそうなっているわけです。プラスチックみたいな化石燃料由来の素材なんて、化石燃料がそもそも地中に堆積した動植物の死骸なわけで、なんていうのか、いろいろ思うわけです。
宋冬のお母さんは捨てなかったわけですが、これは「極めて貧しい生活の中で、いつか再利用しようと捨てずに屋内に大切に保管」という説明ももちろんあるとは思いますが、別に「極めて貧しい体験」をしたことがない人だって物を捨てるのは心苦しいわけで、人に物を捨てさせることを躊躇わせるもっと原始的で根源的な何かがあるような気がしてならないわけです。
あと、こういうのを見ると、なんていうか、捨てることももったいないけど、作ることも買うことも贈ることも、ちゃんと後のことを考えないといけないな、って思います。
何がいいたいか分からなくなってきましたが、いろんなことを考えさせてくれる素敵な作品だなって話です。